この記事で解決出来る悩み
- 住宅取得資金の贈与とは?
- 受贈者の要件
- 住宅用の家屋の新築、取得または増改築等の要件
- 住宅取得資金の贈与の必要書類
- 暦年贈与との併用
- 相続時精算課税制度との併用
- 住宅取得資金の贈与の注意点
- 住宅取得資金の贈与の効率

1.住宅取得資金の贈与の概要
住宅取得資金の贈与は、マイホームを購入したり、建てたりする場合に、父母や祖父母などの直系尊属から、マイホームを購入したり、建てたりする為に使う金銭の贈与を受けた場合、一定の要件を満たすと、最高1,000万円まで非課税になるという制度です。
例えば、次のようなケースです。
住宅取得資金の贈与の例
家族構成は、65歳の父と母、35歳の子供だとします。
35歳の子供には、子供の配偶者と、子供の子供、つまり、65歳の父と母からすると、孫が1人います。
この35歳の子供が家を購入する際に、65歳の父から、家を購入する際の資金に充てるお金を一定の要件を満たして受け取ると、贈与税が非課税になるという制度です。
なお、上記の例で、父と母の両方から1,000万円ずつの住宅取得資金の贈与を受ける事は出来ません。
住宅取得資金の贈与は、お金をあげる人、つまり、贈与者単位で考えているのではなく、お金を貰う人、受贈者単位で考えます。
ただし、夫と妻が、それぞれの父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合は、それぞれ1,000万円ずつ、合計2,000万円の住宅取得資金の贈与を使う事が出来ます。
この時に気を付けたいのは、払った分は、ちゃんと持ち分を入れる事です。
例えば、次のようなケースです。
夫婦それぞれ住宅取得資金の贈与を使う例
4,000万円の不動産を購入するとします。
夫婦がそれぞれ1,000万円ずつの住宅取得資金の贈与を受けたとしましょう。
残りの2,000万円は、夫が住宅ローンを組みます。
このケースでは、たしかに、夫婦と父母や祖父母などの直系尊属との間では、贈与税が非課税になります。
ただし、4,000万円の不動産を購入する時に、妻が1,000万円を拠出しているのに、妻の名義を入れず夫の名義にしてしまったら、妻から夫に対して1,000万円の贈与があったものとされてしまいます。
このように、夫婦間でも贈与は発生します。
なので、このケースでは、4,000万円の内、3,000万円を夫が払うのですから、3/4が夫。
住宅取得資金の贈与を受けて、1,000万円を妻が払うのですから、1/4が妻。
という所有権の持ち分にするべきです。
上記のような持ち分の割合は、見過ごしがちなポイントなので注意しましょう。
非課税限度額
住宅取得資金の贈与の非課税限度額は、省エネ等住宅かそれ以外の住宅かによって変わります。
省エネ等住宅が1,000万円、それ以外の住宅が500万円です。
省エネ等住宅
省エネ等住宅は、家屋の区分に応じ、次の表1省エネ等基準等に適合し、表2添付書類の書類を贈与税の申告書に添付することで証明されたものをいいます。
暦年贈与、相続時精算課税制度との併用
住宅取得資金の贈与の特例は、暦年贈与、相続時精算課税制度と併用する事が出来ます。
暦年贈与は、年間110万円まで非課税です。
暦年贈与と併用する場合には、住宅取得資金の贈与の1,000万円と、暦年贈与の110万円を足した、1,110万円まで非課税で贈与をすることが出来ます。
相続時精算課税制度は、年間110万円まで非課税になる基礎控除と、相続財産に持ち戻す必要がありますが贈与時には贈与税が非課税になる2,500万円の特別控除があります。
相続時精算課税制度と併用する場合には、住宅取得資金の贈与の1,000万円と、基礎控除の110万円、特別控除の2,500万円、合計3,610万円まで非課税で贈与することが出来ます。
ただし、特別控除の2,500万円は贈与税は非課税ですが、相続時に相続財産に全額持ち戻すので節税ではありません。
なお、暦年贈与で贈与をした贈与額は、年間110万円まで非課税ですが、加算対象期間は、相続財産に持ち戻します。
加算対象期間は、令和6年(2024年)から、法改正前の3年以内の持ち戻しから、7年以内の持ち戻しに変更されます。
このように、暦年贈与と相続時精算課税制度には、それぞれメリットデメリットがあります。
暦年贈与と相続時精算課税制度の特徴を踏まえた上で、どう選択すればいいのかは後述します。
住宅取得資金の贈与の期限
住宅取得資金の贈与は、期限のある特例です。
令和8年12月31日まで使える特例です。
今まで何度も延長されてきた制度ですが、今後延長されるかは分かりません。
その為、住宅取得資金の贈与を検討する際には、期限内に検討しましょう。
2.受贈者の要件
住宅取得資金の贈与を受ける人、つまり、受贈者には住宅取得資金の贈与を使うための要件があります。
要件を満たさないと住宅取得資金の贈与は使えませんので利用する前に必ず確認が必要です。
一つずつ確認していきます。
贈与を受けた時に贈与者の直系卑属であること
配偶者の父母や祖父母などは、直系尊属には該当しません。
ただし、養子縁組をしている場合は直系尊属に該当します。
贈与を受けた年の1月1日において、18歳以上であること
民法改正により、成人年齢が、20歳から18歳に引き下げられました。
その為、令和4年4月1日からは18歳以上ですが、令和4年3月31日以前は20歳以上でした。
贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下であること
新築等をする住宅用の家屋の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、1,000万円以下です。
合計所得金額は、給与の額面の金額ではありません。
給与所得、配当所得、不動産所得、事業所得、雑所得などの「総合所得」を合計した金額、土地・建物等の譲渡所得などの分離所得も合計した金額です。
給与所得は、給与所得控除を引いた金額になるので、額面よりは、低い金額になります。
平成21年分から令和5年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと
期間内に住宅取得資金の贈与を利用している場合には、新たに住宅取得資金の贈与を利用する事が出来ません。
配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から住宅用の家屋の取得をしたものではないこと、又は、これらの方との請負契約等により新築もしくは増改築等をしたものではないこと
親なら売買ではなく、相続で取得して、小規模宅地等の特例を検討しても良いでしょう。
贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること
受贈者が「住宅用の家屋」を所有することにならない場合は、住宅取得資金の贈与を利用することはできません。
「住宅用の家屋」を所有するというのは、共有持分を有する場合も含まれます。
贈与を受けた時に日本国内に住所を有し、かつ、日本国籍を有している事
受贈者が一時居住者であり、かつ、贈与者が外国人贈与者または非居住贈与者である場合を除くなど、一定の場合には、この特例の適用を受けることができます。
贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その家屋に居住すること、または同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であることが見込まれること
贈与を受けた年の翌年12月31日までにその家屋に居住していないときは、この特例の適用を受けることはできませんので、修正申告が必要となります。
3.住宅用の家屋の新築若しくは取得又は増改築等の要件
「住宅用の家屋の新築」には、建物を新築する土地、または、建物の新築に先行して取得する土地を含みます。
「住宅用の家屋の取得又は増改築等」には、建物の取得又は増改築等に伴う土地等の取得を含みます。
また、対象となる住宅用の家屋は、日本国内にあるものに限られます。
それぞれ、具体的に要件を確認していきます。
新築又は取得の場合の要件
新築又は取得をした住宅用の家屋の床面積
新築又は取得をした住宅用の家屋の登記簿上の床面積、マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積が、40㎡以上240㎡以下。
かつ、家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。
使用履歴とその他の基準
① 建築後使用されたことのない住宅用の家屋
② 建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、昭和57年1月1日以後に建築されたもの
③ 建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、地震に対する安全性に係る基準に適合するものであることにつき、次のいずれかの書類により証明がされたもの
- 耐震基準適合証明書
- 建設住宅性能評価書の写し(耐震等級に係る評価が等級1、2又は3であるも)
- 既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約が締結されていることを証する書類
※上記の書類は、家屋の取得の日前2年以内に、証明のための家屋の調査が終了したもの、評価されたもの又は保険契約が締結されたものに限ります。
④ 前述の②及び③のいずれにも該当しない建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、その住宅用の家屋の取得の日までに、同日以後、その住宅用の家屋の耐震改修を行うことについて、次に掲げる申請書等に基づいて、都道府県知事などに申請をすること。
かつ、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその耐震改修によりその住宅用の家屋が耐震基準に適合することとなったことにつき、次に掲げる証明書等により証明がされたもの。

※申請書等は、住宅用の家屋の取得の日までに行った申請に係るもの、また、証明書等は、贈与を受けた年の翌年3月15日までに耐震基準に適合することになった住宅用の家屋に係るものに限ります。
増改築等の場合の要件
増改築等をした後の住宅用の家屋の床面積
増改築等をした後の住宅用の家屋の登記簿上の床面積、マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積が、40㎡以上240㎡以下。
かつ、家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。
一定の工事に該当する証明
増改築等の工事が、自己が所有し、かつ、居住している家屋に対して行われたもので、一定の工事に該当することについて次のいずれかの書類により証明がされたものであること。
- 確認済証の写し
- 検査済証の写し
- 増改築等工事証明書
増改築等工事証明書は、増改築等に係る工事が、住宅用の家屋について行う給水管、排水管又は雨水の侵入を防止する部分に係る修繕又は模様替である場合、住宅瑕疵担保責任保険法人が引受けを行ったリフォーム工事瑕疵担保責任保険契約が締結されていることを証する書類も併せて提出する必要があります。
増改築等に係る工事に要した費用
増改築等に係る工事に要した費用の額が100万円以上であること。
また、増改築等の工事に要した費用の額の2分の1以上が、自己の居住の用に供される部分の工事に要したものであること。
4.住宅取得資金の贈与の利用の流れ
住宅取得資金の贈与で気を付けなければいけないのは、手続きが必要だという事です。
税務署での手続きが必要です。
毎年一定数の方が、手続きをせずに、住宅取得資金の贈与の特例を使えない状態になります。
額が大きな贈与なので、使えなかった時は、大きな贈与税を払う事になります。
なので必ず、手続きは行うようにしましょう。
住宅取得資金の贈与の特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、手続きを行います。
手続きを行う際には、住宅取得資金の贈与の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に、戸籍謄本、新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付します。
住宅取得資金の贈与の特例の適用を受ける際の贈与税の申告書には、下図の計算明細書を添付します。

計算明細書、添付書類のチェックシートは、国税庁のWEBサイトよりダウンロードする事が出来ます。
国税庁WEBサイト(計算明細書、添付書類のチェックシートのダウンロードページ)
提出先は、納税地の所轄税務署です。
土地・建物の登記事項証明書については、贈与税の申告書に不動産番号を記載することなどにより、その添付を省略することができます。
5.税務署にも寄せられるよくある質問
質問1
私は、令和6年12月に父から住宅取得のために贈与を受けた資金を、同月中に契約締結したマンションの頭金の支払に充てましたが、このマンションの完成・引渡しは令和7年6月になる予定です。この場合、私は非課税制度の適用を受けられますか?
マンションや建売住宅の場合は、住宅用家屋の「取得」に当たりますが、この場合、住宅取得等資金の贈与を受けた翌年の3月15日までにその引渡しを受けていなければ、住宅取得資金の贈与の適用を受けられません。
なので、今回の場合は適用できません。
今回のようなケースは、住宅取得資金の贈与の特例のお金を手付金に利用したので、引渡しまでの時間が長く、利用が出来なくなってしまいました。
その為、手付金は、自分で用意するか、暦年贈与で贈与するか、貸付をするなど、住宅取得資金の贈与以外で用立て、引渡しが近い時に、住宅取得資金の贈与を使えば、問題なく使う事が出来ました。
このように、進め方一つで、住宅取得資金の贈与の特例が使えなかったり、使えるようになる事があります。
質問2
私は、夫と共に住宅を取得するに当たり、祖父から贈与を受けた金銭の全額を土地の取得資金に充てて、その土地の上の建物は夫が銀行からの借入金により取得しました。
この結果、土地は私と夫の共有、家屋は夫の単独所有となりました。
この場合、私が祖父から贈与を受けたお金は、住宅取得資金の贈与の特例を受けることはできますか?
住宅取得資金の贈与は、贈与を受けたお金で、新築等をする建物の土地の取得に充てる場合も対象です。
ただし、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、取得した土地の上の建物を所有することにならない場合は住宅取得資金の贈与の適用を受けることはできません。
共有であっても構わないので、建物の所有権を取得しないと、住宅取得資金の贈与の特例は使えません。
このケースであれば、土地の取得に、妻が贈与を受けたお金の全額を入れる必要はないはずです。
住宅ローンを組む際のお金の割り振り一つで変えられます。
なので、このような事務的な手続きで、住宅取得資金の贈与が使えなくなるような事が無いよう気を付けましょう。
質問3
父から居住用の不動産の贈与を受けましたが、住宅取得資金の贈与の適用を受ける事はできますか?
住宅取得資金の贈与の特例は居住の用に供する建物の新築若しくは取得または増改築等の対価に充てるための金銭の贈与を受けた場合に限られます。
なので、不動産の贈与を受けた場合には住宅取得資金の贈与の対象となりません。
このように、住宅取得資金の贈与の特例は、不動産という現物ではなく、あくまでも、住宅を取得する為の金銭の贈与の時に使える制度です。
質問4
現在居住している住宅のローンを返済するために父から金銭の贈与を受けましたが、住宅取得資金の贈与の適用を受けることはできますか?
住宅取得資金の贈与は居住の用に供する家屋の新築若しくは取得または増改築等の対価に充てるための金銭の贈与を受けた場合に限られています。
なので、住宅ローンを返済するための金銭の贈与を受けた場合には、住宅取得資金の贈与の対象となりません。
質問5
住宅取得等資金の贈与者が亡くなった場合、相続税申告を提出する際の相続税を計算する時には、住宅取得資金の贈与の特例を使ったお金は、相続税の課税価格に加算しますか?
住宅取得資金の贈与の適用を受けて、贈与税の課税価格に算入されなかった金額は、相続税の課税価格に加算する必要はありません。
6.住宅取得資金の贈与の注意点
住宅ローン控除の適用を受ける場合
住宅ローン控除の適用を受ける人が次の①の金額が②の金額を超えるときには、その超える部分に相当する金額については住宅ローン控除の適用はありません。
① 住宅ローンの年末残高の合計額
② 住宅用の家屋の費用から、住宅取得資金の贈与を受けた部分の金額を差し引いた額
小規模宅地等の特例
住宅取得資金の贈与を利用するという事は、相続税を大きく減税出来る小規模宅地等の特例が使えなくなります。
小規模宅地等の特例は、亡くなった人が住んでいた家を相続する際に、小規模宅地等の特例を使える相続人が相続すると、その評価額を80%減額してくれる制度です。
例えば、1億円の不動産であれば、80%の8,000万円が減額になり、2,000万円に対して、課税がされます。
8,000万円の評価が引きさがるとなると、相続税の実効税率が20%の人であれば、1,600万円の節税効果です。
かなり大きいですよね。
それに対して、住宅取得資金の贈与の特例は、最高1,000万円ですから、相続の時に手元から1,000万円無くなっていると、相続税の節税効果は、1,000万円の20%ですから、200万円の節税効果です。
これだけ大きな差がでます。
このように大きな節税効果のある小規模宅地等の特例ですが、使える相続人は、配偶者、同居していた親族、もしくは、賃貸暮らしの相続人となります。
賃貸暮らしの相続人だと使えたのに、相続人が自分で家を持ったり、相続人の配偶者が家を持つことで、小規模宅地等の特例が使えなくなるのです。
なので、相続税がかかる方で、ご自宅の価値が高い場合には、小規模宅地等の特例が使えなくなる事も計算に入れておく必要があります。
7.住宅取得資金の贈与の効率
住宅取得資金の贈与自体の効率
生前贈与は、財産を移転して、税金を安くしようとする行為です。
住宅取得資金の贈与も、早く財産を移転したいという理由もあるかと思いますが、早く財産を移転するだけなら、税金がかかってでも早く財産を移転するはずです。
ということは、早く財産を移転したいという理由は、経済的なメリットがある事が前提です。
つまり、経済的な利益を得ようとする行動なので、一つの資産運用と考える事が出来ます。
なのでまず、生前贈与自体の効率をお伝えする前に、資産運用の効率を一つ確認します。
その資産運用というのは、定期預金です。
運用と言っても、リスクがほとんどないので、株や不動産と比べたら、イメージがしやすいと思います。
定期預金の現在
突然ですが、この定期預金が今、金利何%くらいかご存知ですか?
今では、メガバンクやネット銀行で、1%前後の定期預金があります。
また、年金の受取口座になっている金融機関のキャンペーンものの金利であれば、0.3~0.5%上乗せというものがあります。
仮に、定期預金の金利が0.4%だったら、その金利の定期預金で、相続税の納税資金が貯められると思いますか?
0.4%の金利では、到底相続税の納税資金は貯められないですよね。
つまり、0.4%の金利では、相続対策は、厳しいです。
これが現在の定期預金です。
上記の定期預金をしっかりと覚えておいてください。
では、あらためて、住宅取得資金の贈与について、考えていきたいと思います。
実際に例を使って考えてみたいと思います。
まずは、住宅取得資金の贈与をする事での節税額を考えます。
住宅取得資金の贈与の節税額
住宅取得資金の贈与を使い、1,000万円を贈与するとします。
1,000万円を贈与した人が亡くなった場合の相続税の実効税率は10%だとしましょう。
つまり、住宅取得資金の贈与をする事で、贈与をした人が亡くなった時に、相続財産から贈与をした1,000万円が少なくなります。
相続財産から1,000万円少なくなることで、その1,000万円に対して相続税が課税されなくなります。
相続税の実効税率は10%なので、1,000万円の10%である100万円が節税になります。
このように、1,000万円を贈与する事で、100万円の節税になるのです。
では、この100万円の節税は、いつ節税になるのでしょうか?
多くの人が贈与をした時と間違えます。
しかし、贈与をした時ではなく、相続の時です。
贈与をした時には、住宅取得資金の贈与で1,000万円が非課税になりますが、これはあくまでも贈与税です。
贈与は、相続の時に相続財産から生前贈与をした分が財産額が少なくなってるから、相続税の節税になります。
つまり、贈与をした時ではなく、贈与をした後、数年後に相続が発生した時に、節税になるのです。
では、この住宅取得資金の贈与の仕組みって、何かに似ていませんか?
具体的に、考えてみます。
住宅取得資金の贈与の仕組み
65歳の父が、35歳の子に、住宅取得資金の贈与を利用して1,000万円を贈与します。
父は、85歳で亡くなり、相続が発生したとします。
この生前贈与の仕組みが、何かに似ていませんか?
少し表現方法を変えます。
65歳で1,000万円の贈与をして、85歳の時に100万円の節税になります。
どうですか、気づきましたか?
そう、この仕組みって、定期預金に似ているのです。
65歳で1,000万円の定期預金に入って、85歳で100万円の利息を受け取るというのと、経済的な効果は一緒なのです。
では、住宅取得資金の贈与と定期預金の仕組みが同じなのであれば、効率はどのように考えれば良いでしょうか?
100万円という節税額(定期預金の場合は利息の額)ですか?
もしそうであれば、55歳で贈与をして85歳で相続が発生する時と、75歳で贈与をして85歳が発生する時、同じ効率になりますよね。
55歳で贈与をして85歳で相続が発生した場合は、30年間で100万円の節税。
75歳で贈与をして85歳で相続が発生した場合は、10年間で100万円の節税。
30年間で100万円の利息を得る定期預金と、10年間で100万円の利息を得る定期預金、同じ効率ですか?
10年間で100万円の利息を得られる定期預金を3回行ったら、30年間で300万円になります。
このように、同じ利息の額だったとしても、その経済的な利益を得られる時間で、効率は全然違います。
定期預金の効率を判断する際でも、利息ではなく、経済的な利益をどれだけの期間で得られるかまでが考慮された金利で判断を行います。
では、この住宅取得資金の贈与が金利でいったら、何%なのかという効率を計算していきましょう。
住宅取得資金の贈与の金利(簡易計算)
先ほどの65歳で1,000万円の住宅取得資金の贈与をして、85歳で相続が発生した例で考えます。
100万円の節税は、65歳で生前贈与をして、85歳で相続が発生した20年間の効率です。
その為、次の式で計算します。
節税額100万円 ÷ 20年間 ÷ 贈与額1,000万円
これを計算すると、0.5%です。
これが、住宅取得資金の贈与の効率です。
しかも、これは体感して頂きたいので、単純計算をしましたが、実際の計算はもう少し複雑です。
銀行の金利というのは、複利という仕組みで出来ています。
先ほど、計算したものは、単利という計算方法です。
では、複利で計算すると何%なのかというと、0.48%です。
0.48%だと、冒頭にお話しした0.4%の定期預金では相続対策は出来ないと確認をしたものと、ほぼ変わりません。
1,000万円の贈与が出来ると聞くと、大きな節税になると感じてしまいがちですが、効率で考える良くはないのです。
住宅取得資金の贈与を使う事で住宅ローンを組まない場合の効率
住宅取得資金の贈与を使う事で、住宅ローンを組まなくてよくなる額があるのであれば、住宅ローンの金利分も住宅取得資金の贈与の効率と言えます。
例えば、住宅ローンの金利が変動金利で1%だとしましょう。
前述の例の住宅取得資金の贈与の効率0.48%だとすると、住宅ローンを組まなくて良くなった金利1%と住宅取得資金の贈与の効率0.48%を足した1.48%が住宅取得資金の贈与の効率です。
8.暦年贈与、相続時精算課税制度の選択
住宅取得資金の贈与は、暦年贈与、相続時精算課税制度のどちらかと併用する事が出来ます。
どちらを併用するかは、暦年贈与、相続時精算課税制度のどちらの特徴も理解しておく必要があります。
なので、ここでは、暦年贈与と相続時精算課税制度について解説していきます。
暦年贈与
暦年贈与は、年間110万円の非課税枠があり、贈与額が大きくなるつれて税率が上がる累進課税です。
令和5年度税制改正で、相続発生前3年以内に贈与で取得した財産が有れば相続財産に持ち戻す制度から、令和6年から段階的に7年以内に贈与で取得した財産に移行します。
この暦年贈与の良いところは、好きな額を好きなだけ贈与出来るという事です。
多くの人は、110万円の非課税枠で贈与をしますが、財産額の多い人はもっと大きな額の贈与をすることで贈与の効果を最大化します。
一番節税出来る贈与額
贈与は、税負担を下げる行為ですが、贈与の効果を最大化し、一番節税出来る贈与額について考えていきます。
では、もしあなたが、生前贈与を使った相続税の節税対策を考えるなら、どのように内容を考えますか?
110万円の贈与額を複数人に行う?
相続人ではない、孫や子の配偶者に行う?
1年ではなく、複数年行う?
色々と考え方はあると思います。
ですが、今の選択肢で気づいて頂きたいのが、どれも当事者ごとにカスタマイズされた内容ではなく、制度の説明という事です。
相続人ではない孫や子の配偶者なら持ち戻しの対象にならないことは制度の解説です。
複数人に行う、複数回行うのは、当然の話です。
そもそも、110万円というのは基礎控除額であって、一番節税出来る贈与額ではないです。
では、一番節税が出来る贈与額をどうやって導けば良いでしょうか?
一番節税出来る贈与額の基本的な考え方
一番節税出来る贈与額を考える前に、まず、節税が出来ているかどうかは、どう考えれば良いでしょうか?
節税出来ているかどうかであれば、生前贈与をする前の相続税と、生前贈与をした後の相続税と贈与税を比較すれば分かります。
生前贈与をする前の相続税と、生前贈与をした後の相続税と贈与税の比較は、節税出来ているかどうかだけでなく、どれだけ節税出来ているかという額も分かります。
贈与税を考える時には、一回の贈与だけでなく、複数年で複数回贈与した贈与税で考える必要があります。
ただ、この方法では、節税出来るかどうかが分かり、いくら節税出来るかが分かりますが、1回の贈与のパターンです。
なので、いくらの贈与額が一番節税出来るかが分かる訳ではありません。
一番節税出来る贈与額を探す為には、10万円刻みなどで変えた贈与額で、生前贈与をした後の相続税と贈与税を無数に計算し、無数に計算した中から一番低い額を探すという方法になります。
比較する相続税の注意
相続税は、夫婦の場合、片方の相続税で考えても意味がありません。
夫婦の場合、夫婦の相続税額の合計額で考えないと、意味がないのです。
夫婦の場合、先に亡くなる方を一次相続、後に亡くなる方を二次相続と言いますが、一次相続の時に、配偶者がどれだけ相続するかという配分一つで、夫婦の相続額の合計額が2倍前後変わる可能性があります。
例えば、相続財産1億円、家族構成は、父、母、子供が2人の場合、夫婦の相続税額の合計額の最小値は、365.4万円、最大値は770万円、その差は約405万円です。
約405万円というと、最小値の365.4万円の2倍以上です。
このように、夫婦の相続では、片方の相続で考える事は意味が無く、夫婦の相続税額の合計額で考える必要があります。
その為、一番節税出来る贈与額を算出する為に、生前贈与をする前の相続税と、生前贈与をした後の相続税と贈与税を比較する際、夫婦の場合、片方の相続税ではなく、夫婦の相続税の合計額で考える必要があるのです。
つまり、生前贈与をする前の一次相続の相続税、二次相続の相続税と、生前贈与をした後の一次相続の相続税、二次相続の相続税、贈与税を比較して、一番節税出来る贈与額を探していきます。
一番節税出来る贈与額のシミュレーション
今回は、贈与額を10万円刻みで、シミュレーションしていきます。
贈与額を10万円刻みで複数のパターン計算しつつ、一次相続と二次相続の相続税を一次相続の時の配偶者の取得割合を1%刻みで計算していきます。
その為、計算量は膨大になるので、電卓で計算を行うというのは、到底無理です。
これを計算していくと、このようなグラフになります。

このグラフの点、全てが、計算した点です。
これだけ膨大な計算量が必要です。
ここまで計算するからこそ、顧客の財産額や家族構成、贈与をする回数、一般税率か特例税率かなどによって違う一番節税出来る贈与額を正確に出す事が出来ます。
このような計算は、電卓で計算する事も難しいですし、エクセルでも関数を使って計算する事も難しいです。
ただし、このような計算は、計算を行う為のシステムを利用すれば、必要ないくつかの情報を入力するだけで、簡単に算出する事が出来ます。
一番節税出来る贈与額の計算例
家族構成は配偶者と子供2人、贈与をするのは子供2人、財産は5億円、配偶者は固有の財産を持っていないものとします。
相続が発生した時は、法定相続分通り相続したとします。
相続の10年前からの暦年贈与を想定した場合、7年以内の持ち戻しを加味したら、一番節税出来る贈与額は、1,080万円になります。
贈与をした場合と、贈与をしない場合の税負担の差は、16,902,300円になります。
ちなみに、年間110万円の贈与だと、4,189,300円の節税効果しか出せず、12,713,000円の節税効果の差が生まれます。
今回算出した贈与額1,080万円を計算で出そうと思ったら、何百回、何千回と計算を行い、何百、何千という計算結果から、一番低い贈与額を手作業で探すという作業です。
一番節税出来る贈与額は、一次相続の時に配偶者にどれくらい財産の割合を渡すか、配偶者は固有の財産を持っているか、相続時精算課税制度を併用するかどうか、によっても変わります。
これらの計算は、電卓などでは、到底できません。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度は、60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる制度です。
相続時精算課税制度には、基礎控除と特別控除があります。
基礎控除は110万円で、毎年110万円までは、非課税で贈与をする事が出来ます。
暦年贈与の110万円の控除と違い、相続財産に持ち戻す必要がありません。
特別控除は2,500万円まで非課税で贈与をする事が出来ますが、相続時に相続財産に全て持ち戻します。
なので、基礎控除の110万円は毎年使え、相続税の節税になりますが、特別控除の2,500万円は相続税の節税にはなりません。
相続時精算課税制度について詳しくはコチラのページで解説しています
暦年贈与、相続時精算課税制度の使い分け
暦年贈与は、基礎控除の110万円以上に贈与をする事で大きな額の節税も出来ます。
相続時精算課税制度は、基礎控除の110万円を超えると、全て相続財産に持ち戻す必要があります。
なので、住宅取得資金の贈与との併用だけでなく、相続税の節税をしたいという人は、暦年贈与を選択するといいでしょう。
相続時精算課税制度には、2,500万円の特別控除があるので、早く財産を移転して、高い額の家を建てさせてあげたい、買わせてあげたいという時には、相続時精算課税制度を選択するといいでしょう。
9.参考動画
今回お伝えした住宅取得資金の贈与、暦年贈与・相続時精算課税制度については、下記の動画でもお伝えしています。
・住宅取得資金の贈与 完全攻略
・暦年贈与、相続時精算課税制度を合わせて学ぶ
10.まとめ
ここまで、住宅取得資金の贈与の概要、受贈者の要件、.住宅用の家屋の新築若しくは取得又は増改築等の要件、利用する流れ、税務署にも寄せられるよくある質問、注意点、住宅取得資金の贈与の効率、暦年贈与、相続時精算課税制度の選択についてお伝えしました。
住宅取得資金の贈与を利用するには、色々な要件があります。
一つ一つの要件は難しくありませんが、要件を知らない事で、住宅取得資金の贈与が利用出来ず、暦年贈与になってしまい、多額の贈与税が発生してしまうケースが毎年起きています。
なので、要件を押さえて利用しましょう。
また、暦年贈与や相続時精算課税制度を併用する場合には、住宅取得資金の贈与の内容を理解するだけでなく、暦年贈与と相続時精算課税制度も理解しながら、併用する必要があります。
要件を押さえ、暦年贈与と相続時精算課税制度の内容を理解し、住宅取得資金の贈与を上手に活用していきましょう。
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